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投資用区分所有マンションの今後の価格動向

昨今、都市部を中心とした不動産価格の上昇を受けて、「不動産バブルの再来か」というような文字をよく見かけます。

実はもうババ抜きは始まっていて、今は「買い控えるべき」という声と、東京オリンピックまでは、少なくとも都市部では十分キャピタルゲイン※が期待できるので「強気で投資すべき」という声と、両方聞こえてきます。
※購入した不動産を購入価格以上の金額で売却することで得られる利益のこと。

この状況、区分所有マンション投資に限ってはどうでしょうか。少し掘り下げて考えてみました。

以下は不動産投資物件の検索サイト「健美家」が調査した資料※です。(クリックで拡大)
※「不動産投資と収益物件の情報サイト 健美家」より

資料

ご覧頂くと分かるように、2013年の初め頃から投資用の区分所有マンションの価格がグングン上昇し、反比例するように利回りが下がっています。

マンション価格の上昇については以下のような理由が挙げられます。

・東京オリンピックの開催決定を受け、東京都及びその近郊の不動産が値上がりするのではないかという期待感から、投資が増えたため。

・(上記を後押しするように)金融緩和によって金融機関からの融資が受けやすくなったため。

・外国人投資家(香港、台湾など)による都市部を中心とした投資が増えたため。

反比例するように利回りが下がったのは、約2年という短期間に上昇した投資用マンションの価格に対して、賃料が変動していないためです。



次に、平成28年2月1日時点で健美家に掲載されていた投資用マンション※を分析してみます。
※投資に適した東京23区内に所在、最寄駅から徒歩5分以内、16u以上、新耐震、700万円以下で絞り込んだ19物件についての平均値

@表面利回りの平均値※:9.16%
※年間の家賃収入を売価で割ったもの。

A売価の50%を借り入れた場合(金利4%、借入期間15年、元利均等で計算)の実質利回りの平均値※:1.92%
※家賃より管理費・修繕積立金、固都税(年間24,000円で計算)、借入返済を差し引いた、手取りの年間の家賃収入を売価で割ったもの。

BAの年間の手取り家賃収入の平均値:118,599円

上記のAとBの通り、不動産売価の50%を現金で用意した場合でも、年間の手取り家賃収入は12万円を切るような状況です。

これは要するに不動産価格の上昇に対して家賃相場が変動していないため、利回りが低下して収益性が悪化しているということです。

頑張って売価の50%を現金で用意して投資しても、年間の手取り家賃収入が12万を切るような状況では、単身用マンションの9割以上の入居者が4年未満で退去する統計※から判断しても、退去後の内装工事代金及び次の募集にかかる経費(仲介手数料など)を支払った時点で、それまでの収支が赤字になる可能性があります。
※「日管協短観」より

仮に統計上最長の4年間入居した場合でも48万円(12万円×4年間)しか貯えられない計算ですから、内装工事以外にエアコンや給湯器などの高額設備を新設する必要がある場合で、次の入居者を決めた仲介業者に手数料を2ヶ月分支払ったりすると、48万でも結構ギリギリになるかも知れません。

それが例えば2年間で退去した場合は24万しか貯えがないので、上記のようなケースではまず間違いなく収支が赤字になります。赤字の投資なんて面白くないですよね。

なので、今の不動産市況だと売価に思い切り指値(値引き)を入れて購入するか、それが難しいなら自己資金の割合を売価の7割とか8割まで高め、融資による毎月の返済額を抑えるようにしないと、長期的に収支の黒字は見込めないでしょう。

融資による毎月の返済額を抑えるために、借入期間を長期(20年〜30年)にする方法がありますが、2戸3戸と投資を続けていくつもりならお勧め出来ません。

残債が多いと、いざというとき満足な融資が受けられない可能性があり、将来の投資計画に支障が出かねません。やはり売価における自己資金の割合を高める方法で融資額を抑え、短期(10年〜15年)で返済するように計画すべきです。



さて、本稿の結論ですが、現時点(平成28年4月時点)では積極的な投資は控えた方が無難だろうというものです。

日銀のマイナス金利を背景に低金利で融資を受けやすい環境ではあるものの、不動産価格の上昇が顕著で、投資リスクが吸収できなくなる程利回りが低下しているからです。

もちろん前述したような思い切り入れた指値が通って格安で購入できるとか、売価のほとんどを現金で支払える等の、収支を長期的に黒字化できる見通しが立てば投資すべきですが、そうじゃなければちょっと慎重になった方が良い時期です。

この局面は入居者が1回か2回入れ替わる東京オリンピックくらいまでは続きそうですが、収支が合わなくなると買い控えや売却が増えてきて需給バランスが緩み、次第に不動産価格は下がってくると思います。

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