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貸主が直接自分で賃貸管理を行うメリット〜其の壱

皆さん賃貸管理は手間が掛かって面倒くさいものだと思ってますか?

確かに、私のように仕事で十数棟の賃貸マンションを1人で管理するのならそれなりに手間が掛かってしんどいこともあります。(まあ給料をもらってるのでしんどくて当然と言えば当然なんですが(笑)。)

ですが、区分所有マンションの2戸や3戸の賃貸管理であれば、日中仕事を持つサラリーマンでも片手間で十分こなせます。

これは私が十数年間賃貸の管理会社に勤めてきた経験から言い切りますが、区分所有マンションの場合、ある程度築年数がいっても起こるトラブルというのはほとんど限られてきます。またトラブルの発生頻度も低く、退去するまでの数年間1度も連絡してこなかった入居者などざらにいます。

起こるトラブルが限定的なので予め対応する準備が出来ますし、実際の対応も非常に簡単です。特別な知識など必要なく、むしろ手順が分かれば誰でも出来るレベルのものです。

ところが不動産投資家の多くは、毎月家賃の3%〜5%の賃貸管理費を支払って不動産会社に管理を依頼しています。

家賃の3%〜5%が3,000円を下回る場合は、賃貸管理費を3,000円に設定する不動産会社が多く、その3,000円で計算した場合でも、仮に1年間何もトラブルが起きなくても毎年36,000円が出ていく計算になります。

また不動産会社に賃貸管理を依頼した場合、出費は毎月の賃貸管理費だけでは済みません。

例えば付帯設備であるエアコンが故障して、管理する不動産会社が修理を請け負った場合、その修理費用の2割〜3割くらいは手配した不動産会社の利益です。

入居者からエアコンの不具合の連絡を受けた不動産会社の担当者は、そのエアコンのメーカーと型式を確認したら後はメーカーに丸投げします。

実際の修理はメーカーのサービスマンが現地訪問して修理するわけですが、その日程の調整もメーカーに任せる場合が多く、不動産会社の担当者といえば修理の内容をオーナーに伝えるくらいのものです。

つまり修理の手配をして結果を貸主に報告するだけで、仮にメーカーから不動産会社に対して5万円の請求書が届いたら、不動産会社はその請求額に2割利益を乗せた62,500円で貸主に請求するのです。

もちろん不動産会社も商売ですからタダで修理の手配をするわけにはいかないのですが、貸主が自分で修理の手配をしていれば、上記の例では12,500円も出費を抑えられるのです。

修理の手配が複雑で大変なら話は別ですが、設備の不具合に伴う修理や交換の手配なんて簡単ですから、貸主が自分でやらないのはもったいないです。

また退去後の原状回復工事や敷金精算等も何となく専門知識が必要なイメージがありますが、そんなことはありません。不動産会社に頼らなくても貸主だけで十分対処出来ます。

何より貸主自ら対処することによって上記の例と同様に余計な出費を抑えられますし、大家業としての必要な実務も実践的に習得することが出来ます。そしてこの実務の習得は不動産投資を続ける上で必ず活きてきます。

以下に賃貸管理業務の流れに沿って1つ1つ項目を説明していきます。参考にして下さい。



入居中の管理

区分所有マンションを投資目的で購入する際、既に賃借人が住んでいる状態が多いと思います。

この状態で貸主が負うリスクというのは、設備などの不具合と家賃の滞納の二つに大別できます。

設備などの不具合については基本それを直せる業者に手配するだけです。

注意すべき点は「それを直せる業者」の選択です。この選択は不具合を起こした設備などの種類によって以下のように決まります。



【エアコン】

#1.入居者に確認すること

エアコンの不具合の連絡を受けたら、入居者から不具合の内容を聞き取りします。

よくある症状としては、「室内機から漏水する」、「冷風(又は温風)が出ない」、「室外機から異音がする」等ですが、室内機の運転ランプやタイマーランプが点滅している場合は故障の可能性があります。

またリモコンの画面に不具合の原因に応じてエラーコード(E0、U5など)が表示される場合がありますので、それも一緒に確認してもらって下さい。

次にエアコンのメーカーと型式(機種名)を聞き取ります。型式は室内機の側面や底面に記載されていることが多いです。型式を聞けば製造年が分かるので、10年以上使ってるエアコンであれば修理内容によっては新規交換した方が良い、という判断基準にもなります。

「室内機の電源が入らない」という場合は、念のためエアコン専用の子ブレーカーが落ちてないか確認の上、室内機の電源プラグを抜いて、1分置いてコンセントに差し込んでから再度電源が入るか確認してもらって下さい。

「リモコンの画面に何も表示されない」という場合は、リモコンの電池が切れていないか確認してもらって下さい。

「エアコンを動かすと臭う」という場合は、フィルターの掃除をしてもらって下さい。フィルターの掃除は少なくとも夏と冬の年2回はやってもらうように伝えます。

フィルターが汚れると冷暖房効果が弱まるばかりか、余計な電力も必要になるため電気代も上がります、という事実を入居者に伝えると心理的な効果が期待できます。

#2.エアコンのメーカーに連絡する

該当するメーカーの修理受付センターをインターネット等で調べて電話します。受付に必要事項を伝え、訪問日時の調整は直接入居者としてもらうよう依頼します。

入居者にもメーカーより直接連絡が入る旨を事前に伝えておきます。

10年以上使用しているエアコンの場合、前述の通り修理の内容や費用によっては新しいエアコンに交換した方が経済的な場合があります。

すぐまた別の個所が不具合を起こす可能性のある10年選手のエアコンを数万円も掛けて修理するのはバカらしいので、メーカーのサービスマンに相談して適切なアドバイスをもらって下さい。

サービスマンが現地で調査をした結果、その場で修理可能な場合でも後日対応になる場合でも事前に見積りの提示があります。前述の通り、その際の修理費用とエアコンの耐用年数とのバランスを考えてどうするか決めて下さい。もし迷ったらサービスマンの提案を採用して良いと思います。

ちなみにエアコンの耐用年数は約10年で、冷房能力2.2kW(約8畳まで対応)のエアコン(日本の主要メーカーの製品)だと、標準取付け工事費込みで大体7万〜10万で考えて下さい。



【給湯器】

#1.入居者に確認すること

ガス給湯器の不具合で多いのは、「お湯が出ない」という症状です。これは入居者にとって特に冬場は大きなストレスとなりますので早急な対応が求められます。

そのためにも、出来れば前述のエアコンとこの給湯器だけは、マンション購入時点で、既設されている製品のメーカーと型式を把握しておきましょう。メーカーと型式は不具合が起きてからでも確認できますが、例えば入居者が日中仕事の合間に連絡してきた場合、その電話ではメーカーと型式が確認できず、そのぶん対応が遅くなることがあります。

スムーズに修理や交換をするためには、依頼する業者に正確な情報を早く伝えることが重要です。ですから、使えないとストレスの大きいエアコンと給湯器に関しては事前にメーカーと型式を把握し、どのくらいの期間使用されている製品なのかも知っておくのが望ましいです。

給湯器の耐用年数はエアコンと同じ約10年ですが、例えば10年近く使用している給湯器だと分かっていれば、今度不具合の連絡が入ったら迷わず新規交換しよう、というふうに前もって対処の準備をすることが出来るのです。

通常中古マンションを購入する際、仲介業者より付帯設備表がもらえます。ところが投資用マンションの場合、「入居中なので確認できません」などという理由で作らいない仲介業者が多いです。

ですが買主は安くない仲介手数料を支払うわけですから、どうにかして調べて下さいと強めに要請して下さい。単純に面倒だから作らないだけで、調べようと思えば問題なく調べられる内容なのですから。

話を戻します。給湯器の不具合の連絡を受けた際、入居者に確認する点は、不具合の内容と給湯器メーカー及びその型式です。

併せて次のことも確認してみて下さい。

お湯が出ないという不具合の場合、キッチンのガスコンロが使えるか聞いて下さい。使えれば給湯器の不具合ですが、ガスコンロが使えない場合はガスメーター(マイコンメーター)がガスを遮断している可能性があります。

マイコンメーターは大きな地震とか長時間ガスを使った場合に自動的にガスを遮断する機能を持っています。ですから、例えばお湯の出しっ放しでマイコンメーターの安全装置が働いて知らぬ間にガスが遮断されている、ということはあり得ます。

マイコンメーターは異常を感知すると赤ランプが点滅しますので、ガス会社のサイトを参考に復旧してもらうよう入居者に伝えて下さい。復旧はメーターの復帰ボタンを2秒押して赤ランプの点滅が消えるのを確認するだけなので簡単です。

マイコンメーターに問題がないのにお湯が出ない場合、ガス給湯器本体の電源プラグを1度コンセントから抜いて、数秒待って再度差し込んでもらって下さい。落雷などで給湯器本体の安全装置が作動していても、リレー式の漏電遮断器の場合それで復旧します。

#2.給湯器メーカーなどに連絡する

修理又は新規交換を依頼する先は該当する給湯器メーカーが無難ですが、使用年数や不具合の症状から新規交換が妥当と判断した場合は、それを専門にしている業者を手配しても良いです。

給湯器メーカーや新規交換を専門にしている業者の連絡先はネットで検索すれば出てきますが、専門業者はホームページに工事金額を明示していて、即日対応が可能なところから選びましょう。

単身者用のガス給湯器は16号(給湯能力)で、安いものだと工事費込みで7万円くらいから選べます。なので、7、8年使ってる給湯器なら修理より新規交換する方が賢明だと思います。



【換気扇】

#1.入居者に確認すること

まず、どの場所の換気扇がどのような不具合を起こしたのかを確認します。単身用のマンションであれば3点ユニットバスの換気扇か、キッチンの換気扇のどちらかになると思います。

よくある症状としては、「大きな異音がする」、「動かない」等ですが、換気扇の不具合は原則新規交換で考えます。耐用年数は8年〜10年で、3点ユニットバスの換気扇は3万くらいで新規交換できて比較的コストが安いからです。

#2.業者に依頼する

3点ユニットバスの換気扇は表のカバーに、例えば「三菱 VD-10ZC9」等のメーカーと型番の表示がありますので、それを入居者から聞いて業者に伝えれば業者の訪問は1度で済みます。

依頼する業者はネットで調べればすぐ見つかりますが、工事代金については予め確認するようにして下さい。



【水回りの不具合】

#1.入居者に確認すること

水回りのトラブルで多いのは、「水道の蛇口を閉めたのにポタポタ水漏れがする」、「トイレの水がチョロチョロ流れて止まらない」、「浴室やシンクの排水が流れにくい(又は詰まった)」等です。

水道の蛇口にしろトイレにしろ漏水系の不具合に関しては、その症状だけ確認したらすぐに業者を手配してあげましょう。

多くの賃貸借契約書には入居期間中の小修繕は借主負担とする条文が入っていますが、忙しい単身者にレンチを用意させてコマパッキンを交換しろというのは現実的ではありません。

特に若い女性は、「レンチって何?」という人が大半ですから、「何でわざわざそんな物買って私が直さなきゃならないの!」と不満を募らせてしまいます。そんなことが原因で退去されてしまっては不動産投資は成り立ちません。

昔のように貸し手市場の時代なら話は別ですが、今は貸主が努力して借り手を探さなければならない時代ですから、たとえ賃貸借契約書に条文が入っていても貸主負担で直してあげるべきです。小修繕で入居者負担に出来るのは、せいぜい室内の蛍光灯の交換くらいです。

蛇口の水漏れのほとんどはパッキン類を交換すれば直ります。費用は1万円程です。

トイレの水がチョロチョロ流れて止まらないというのは、多くの場合タンク内のボールタップとかフロートバルブという部材の劣化が原因です。交換する部材にもよりますが、修理費用は大体2万円〜3万円と考えて下さい。

排水が流れにくい(又は詰まった)という場合、それが急に起きたものか、徐々にそうなっていったのかを確認して下さい。急に詰まったという場合は、何か排水管が詰まるような固形物を誤って流さなかったか聞いて下さい。

仮に入居者が誤って何かを詰まらせた場合、それはさすがに過失になりますので、業者の手配はオーナーがしても費用は入居者負担になる旨を予め伝えて下さい。

排水が徐々に詰まってきたという場合は排水管内の汚れの堆積などが原因ですが、通常分譲マンションですと定期的に全戸を対象にした排水管清掃を実施するはずなので、実施されていればこのトラブルは想定しなくて良いと思います。

ご自分が購入した区分所有マンションの管理項目の中に、もし定期的な雑排水管清掃の実施予定がない場合は、管理会社に相談してみて下さい。

#2.業者に依頼する

水回りのトラブルで依頼する業者は、CMをやってるような大手が無難です。私自身仕事ではクラシアンに依頼しています。※別にクラシアンからお金はもらってません(笑)。

大手は基本的な作業はHP上で料金が表記されてるので安心ですし、何より対応が早いので賃借人に喜ばれます。また今はすぐにネットに書き込まれるような時代なので、評判を気にする大手は対応も丁寧です。

賃借人から不具合の症状を確認したら大きめの業者2、3社に電話して、修理に掛かる料金を聞いてから決めても良いと思います。

貸主が直接自分で賃貸管理を行うメリット〜其の弐


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