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テナントリテンション

テナントリテンションという言葉を聞いたことがあると思います。意味は、賃借人に出来るだけ長く住み続けてもらう、というものです。

賃借人の退去理由には不可抗力のものがあります。例えば転勤とか自宅の購入による退去がそれに当たります。これらの理由による退去は貸主側では防ぎようがありません。

逆に、不可抗力以外の退去理由には、例えば管理会社の対応が悪いから、とか、長く住んでるのに家賃交渉に応じてくれないから等が挙げられます。

これらの理由による退去は、管理会社の対応を良くすれば、そして少額でも家賃を減額していれば防げた可能性があります。

テナントリテンションの考え方は、不可抗力以外の退去理由を意図的に取り払い、可能な限り長く賃借人に住んでもらう、というものです。

不動産投資を成功させるために不可欠なのも、この可能な限り長く賃借人に住んでもらう(=長期的に安定して収入を得る)というものなのです。




賃借人が退去してしまうと家賃収入が途絶えるばかりか、次の入居者を確保するまでに内装工事費や募集広告料が必要になります。

また区分所有マンションであれば家賃収入が途絶えても管理費や修繕積立金を毎月支払わなければなりません。借入れがあれば更にローン返済も重なります。

退去しても次の入居者を早く決めればいいだろうと思うかもしれません。でも考えてみて下さい。仮にすぐに次の入居者と契約できたとしても、成約に至るまでには何かしらの内装工事費と仲介業者に支払う募集広告料は必ず発生するのです。

仮に内装工事費と募集広告料の合計で約25万掛かるとします。(但し募集広告料を増額したり内装工事を充実させた場合は25万は超えると考えて下さい。)

次の入居者を確保するために必要なこの約25万という経費は、前述の通り入居者が退去する度に必要になります。

つまり、例えば10年間で1回しか入居者が退去しなかった場合と3回退去した場合とでは実に50万円もこの経費が違ってくるのです。(但し空室が出ると次の入居者が決まるまで賃料が途絶えますので、総合的な収益の差はもっと開きます。)

10年で50万の差なら大したことないとか思わないで下さい。このサイトで目標としている3戸の投資用マンションを所有した場合、50万×3戸で150万も差が出るのです。

これはちょっと大きな負担になりますよね。出来ればその150万円は次の投資用マンションを購入するための資金に充てたいものです。

10年間で3回退去というのは決して大袈裟な数字じゃないです。

最近の日管協の報告※でも、単身用マンションの主な需要である学生及び一般単身者の平均入居期間は、学生の88.3%、一般単身者の94.7%が4年未満で退去する統計が出ているのです。ちなみにこの割合は何年も前からほとんど変わってません。
※2013年度下期「日管協短観」より

ただでさえ学生や一般単身者は入居期間が短いのに、気遣えば防げた退去理由で退去されていたのでは経費がかさみ投資効率が悪くなります。

何だか居心地がいいし、まだしばらくはここに住んでいいかなと賃借人に思わせるような工夫や配慮がテナントリテンションの原点です。

そして私の経験上このテナントリテンションは管理会社に任せるより貸主自ら取り組んだ方が確実に効果が出ます。私自身もそうなのですが、管理会社の担当者は頭では分かっていても担当物件が多くてそこまで手が回らないのです(笑)。



テナントリテンションの具体例としては、次のような行為が挙げられます。

『お中元、お歳暮を贈る』

例えば夏の暑い時期にお中元でジュースの詰め合わせをもらえばちょっと嬉しいと思います。気持ちの問題ですから、クッキーやお煎餅の簡単な詰め合わせでもいいんです。

送料込みで1,500円も出せば十分ですし、今はネットで簡単に手配できるので手間もそれほど掛かりません。ちなみに私はシャディを使っています。また当然ですが購入代金は経費として確定申告できます。

私は毎年3人の賃借人にお中元とお歳暮を贈りますが、こんなことは管理会社に賃貸管理を任せていたらまずやってくれません。贈り物をすると、最初は大抵の賃借人からお礼の電話がありました。

もちろん喜んでもらうだけが目的ではありません。長く住んでいると、特に設備的な故障で賃借人に迷惑を掛けることがあります。

例えばエアコンや給湯器の不具合がそれにあたりますが、そういうときでも贈り物をもらっているというだけで賃借人は心理的に感情的になり難いものです。

毎年お中元もお歳暮ももらってるし、これくらいしょうがないね、という感じです。贈り物にはクレームを抑止する効果もあるのです。



『賃料(又は更新料)を減額する』

長年賃貸管理の仕事をしていると、家賃を下げて欲しいとか、契約更新時の更新料※を減額(あるいは免除)して欲しいと賃借人から要求されることがあります。
※首都圏などの限られた地域の商慣習で、賃貸借契約更新時に賃料の1ヵ月分程度の金額を貸主に支払うもの。

賃借人からしてみれば、毎月の固定支出である家賃を少しでも減額したいと願うのはまあ当然の心理ですし、契約更新時に支払う更新料にしても、減額(あるいは免除)されるに越したことはありません。 この賃借人の心理を利用して契約期間を引き延ばすというのも一つの手です。

私の経験上、賃借人が家賃や更新料の減額を要請してくるタイミングは賃貸借契約の更新前が多いのですが、こうした要請があった場合は若干でも応じてあげましょう。

こうした要請をした賃借人は大家さんにムリを言っているという気持ちを持っているので、例えば家賃交渉なら1,000円でも1,500円でも減額してあげると大抵の賃借人は納得して更新します。更新料の減額要請なら半額にしてあげれば大抵は更新します。

これをヘンに突っぱねて賃借人に退去されようものなら、前述したように退去後の内装工事費と募集広告料の合計で約25万の出費を伴うことになります。

そして当然次の入居者が決まるまで家賃収入は途絶えますが、管理費と修繕積立金は毎月支払わなければならない赤字の状態になります。

素直に家賃交渉に応じて、例えば1,000円減額で更新してもらえば2年間で24,000円の収入減で抑えられます。2,000円減額したって倍の48,000円の収入減で済むのです。25万以上の出費と比較すればどちらが得策か考えるまでもありません。



『在宅クリーニングをプレゼントする』

例えば賃貸借契約の更新時に合わせて、水廻り(キッチン、バス、トイレ、洗面化粧台、洗濯パン等)や窓廻り(ガラス、サッシュ、網戸、換気口など)の専門業者による在宅クリーニングをプレゼントすると大変喜ばれます。

社会人の一人暮らしだと、普段忙しくてなかなか掃除が行き届かないという人も多いです。そこでプロのクリーニング業者を手配して、特に汚れの気になる水廻りや窓廻りの掃除を無料で実施してあげる、というわけです。

中にはクリーニング業者に訪問されることに抵抗を覚える方もいるでしょうが、一度このサービスを受ければ見違えるほど綺麗になりますので、きっと満足すると思います。

クリーニング業者はネットで検索すればすぐに出てきます。料金は上記のプランで30,000円〜35,000円程ですが、これで退去が防げるなら費用対効果はかなり高いです。



『契約更新のお礼に商品券をプレゼントする』

賃貸借契約を更新してくれたお礼に、商品券をプレゼントするというのも一つの手段です。

商品券は全国の有名デパートで使えるものにして、金額は初回の更新であれば2万円で良いと思います。

ポイントは2万円の商品券をプレゼントする際、メモを添えて、「次回2年後の更新時には3万円の商品券をプレゼントします」と予告することです。

そうすれば賃借人に対して、もう2年間住めば今度は3万円の商品券がもらえると前もって宣伝することが出来ますので、解約防止に一定の効果が期待できます。

前述したように、学生も含めた単身者の9割近くが4年未満で退去することから、4年以上住んでもらうこと(2年契約で2回以上更新してもらうこと)は非常に難しく、だからこそ早い段階から心理的に引き留めに掛かるのです。



以上はテナントリテンションの一例ですが、もちろん他にも賃借人に長く借りてもらうための工夫はあると思いますので、何か良いアイデアを思いついたらぜひ実行して下さい。

また次のページでは貸主が自ら賃貸管理を行うメリットとそのノウハウを書いてますが、この賃貸管理の質こそがテナントリテンションに大きく影響しますので、ぜひチェックして下さい。

貸主が直接自分で賃貸管理を行うメリット〜其の壱


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