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賃貸借契約の条文はかくあるべし!〜敷金償却編〜

貸主として、賃借人と締結する賃貸借契約の中身にこだわって、不動産投資におけるリスクを抑えよう、というお話をします。

アパートやマンションの賃貸借契約なんてどれも同じじゃないのと思う方もいるかも知れませんが、そんなことはありません。

部屋を貸すときに賃借人から預かる(借りる方からすると貸主に預ける)敷金の取り扱い一つとっても、定める条文によってまったく異なるのです。

部屋を借りようとするときに、将来退去する際の敷金の清算について注意を払う賃借人はそう多くありませんが、退去時に揉めやすいポイントなので、事前にしっかり説明した上で契約するようにしましょう。

具体的には「預かり敷金は退去時に償却する」というように、はっきりと契約書に定めましょう。

東京都内だと募集条件に敷金を2ヶ月分設定することは難しくなりつつありますが、仮に2ヶ月分預かれたとしても、敷金償却の定めがなければ原則は全額退去時に返金しなければなりません。

ですが、たとえ1ヶ月分しか敷金を預かれなかったとしても、敷金償却の定めがあれば退去時に返金しなくて済みます。

つまり仮に家賃が10万円の部屋だと、敷金1ヶ月分でも償却するのとしないのでは収入に10万円の差額が生じるのです。償却する場合、退去時に償却した敷金10万円を内装工事費に充てることが出来るのでかなりの経費削減になります。

国土交通省が示した退去時における原状回復のガイドラインでは、賃借人に故意や過失が認められる場合でなければ、経年変化、自然損耗とみなされ賃借人に内装工事費を負担させることは出来ません。

また、仮に故意や過失があった場合でも、壁紙などは消耗品として入居期間に応じて賃借人の負担割合を削減しなければなりません。

更に面倒くさい賃借人の場合、あれこれ理屈をこねて費用負担を拒み、交渉が長引いてストレスが増すかも知れません。

契約前の重要事項説明で仲介業者から敷金償却の説明をしてもらった上で契約すれば、退去時に原状回復費用の費用負担で揉めることは少なくなるでしょう。

当然ですが敷金償却を用いることは法的にも問題がなく、敷金1ヶ月分預かりの全額償却でもまったく問題ありません。

退去時の賃借人とのトラブルを未然に防ぎ、また経費削減にもなる敷金償却は賃貸借契約に定めるべきです。

補足ですが、敷金償却を定めたからと言って償却額以上の費用負担を賃借人に求められないかと言うと違います。

仮に賃借人の故意や過失による原状回復費用が敷金償却額を超える場合は、その超えた額を別途賃借人に費用請求することが出来ます。

以上により、賃貸借契約時に賃借人より預かる敷金の退去時の取り扱いについて、敷金償却を用いることがいかに効率的か、ということがご理解頂けたと思います。

繰り返しになりますが、仮に敷金1ヶ月分しか預かれなくても1ヶ月分全額償却してOKです。

最高裁の判例を基準に考えれば、敷金償却は月額賃料の3.5倍くらいまでなら条件付きで認められる可能性が高いと考えます。

条件付きとは、賃貸借契約時に礼金を受領していないことや月額賃料が高額でないこと等ですが、まあ無難に考えて月額賃料の2ヶ月分までなら全額償却にしても問題ないかと思います。 但し、当然ですが契約締結前に重要事項説明に敷金償却することを明記し、仲介業者を介して賃借人に説明の上、同意の署名と捺印をもらわなければなりません。

あとこれも大事ですが、賃貸借契約書の条文にも同様に敷金償却の条文を入れて下さい。

その他にも賃貸借契約のリスクを軽減する方法がありますので興味があれば読んでみて下さい。

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