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私の出会った恐るべし賃借人たち〜開き直る滞納者編〜

これは東京の中野区にある中野坂上駅より徒歩5分の立地にある築古マンションに住んでいた男の話です。

当時男は50代半ばで、バツイチの一人暮らしでした。

まあバツイチはべつにいいのですが、何の見栄なのか、男はマンションの郵便受けに自分の名前と架空の女性の名前を併記していました。

「山田太郎・紗栄子」みたいな感じです。

そのことを指摘すると男は、「防犯上のアレで」などと訳の分からない説明をするのでした。

まあそれもべつにいいのですが、この男は私の会社がこのマンションの管理の仕事を受けた当初から家賃を滞納しがちで、毎月のように電話して督促していました。

督促の電話をすると男は自分が滞納しているのを棚に上げて文句ばかり言いました。

「大体こんな古いマンションで毎月6万も取るのはおかしい」

「今に息子と二人で事業を立ち上げて家賃を前払いする」

「日本経済はおかしい、汗をかかないで儲けてるヤツがいる」

定職につかないでフラフラしてるあなたに言われたくない、という言葉を飲み込んで、「○○さん、単発のバイトとかじゃなくて、定職につかないんですか? まだ若いし体も元気なんだから、ハローワークに行って相談すれば何かしら見つかるんじゃないですか?」

そう言うと男は、「あなたさんね、この年になって20代、30代のガキに使われたくないんだよ、いまさら」などど答えるのでした。

「大体ね、この年になるとあっても単純作業ばっかりだよ、配達とか掃除とかさ、そんなのやってらんないよ、いまさら」

自分の立場もわきまえず文句ばかり並べる男が就職できるわけもなく、そのうち1ヶ月遅れだった賃料が2ヶ月3ヶ月と遅れ、滞納額が増えていきました。

大家さんと相談し、まずは自主的な退去を促してみることにしたのですが、家賃も払えない男に引っ越し費用など払えるわけありません。

そこで私は男に対して生活保護を申請するよう勧めました。生活保護受給者には家賃の上限が設けられるため、仮に受理されれば今のマンションを出て行ってもらえると考えたのです。

健常者に対して生活保護の申請を勧めるのは、まじめに働いて納税している方に申し訳ないのですが、こちらも仕事なので必死です。

男は生活保護の申請について検討すると返答したものの、なかなか行動には移しませんでした。

その理由を尋ねると、男は平然と次のように答えるのでした。

「あなたさん知ってる? 生活保護ってね、申請すると親族に連絡されるのよ、『あなたの親族が生活保護を申請してますが、あなたはこの方を援助できませんか?』って。電話して直接聞かれるのよ、みっともないじゃない、恥ずかしいよ、この年になってさ、いまさら」

しかし最終的に男は生活保護を申請し、受理されました。

自分で勧めておきながら、年下の人間に使われるのが嫌だという理由で定職を持たない男が簡単に生活保護を受けられる現実に少なからずショックを受けました。

お役所仕事とよく揶揄されますが、生活保護を審査する役所も決められた手続きさえ踏めばそれ以外の詮索はせず受理してしまうのですね。まあどうせ税金で賄うのだから関係ないよ、というのが本音でしょうか。



この男が毎月タダでもらう十数万円には、安い給料でも腐らずに頑張って働いている人達の税金も含まれているのだと思うとやるせない気持ちになりました。

役所で決められた家賃の上限を超えるため、男は上限内に収まるアパートに引っ越すことになりました。

部屋を明け渡す時点で男は家賃を3ヶ月滞納していましたので、当然ですが私はそれを支払うよう要求しましたが、男は当たり前のように拒否しました。

「そんなこと知らんよ、俺は社会的弱者なんだから、役所に言ってくれよ役所に」

役所に男の滞納家賃を支払う義務などありません。しかし生活保護受給者を相手に滞納訴訟を起こすのも道義的にいかがなものかという話になり、結局大家さんが泣くことになりました。

退去した男の部屋は相当汚れていたため、原状回復工事は高額になりました。男の故意過失で破損したと思われる個所も多く、例えば壁に鋭利な物をぶつけたような穴が数ヵ所開いていました。しかし男は故意に開けた穴だと認めはするものの、やはり復旧費用の負担については拒否するのでした。

「あなたさん、家賃も払えなくて生活保護受ける人間に請求していいの? 常識でもの考えてから話しなさいよ」




この件で私が思ったのは、日本はとても恵まれた国だということです。

元気で、選ばなければ仕事もあるのに、申請して一定の手続きさえ経れば毎月生活に困らない程度のお金がもらえるのです。

昔と違って、それを恥だと思わない人が増えたことが、生活保護受給者の増加に繋がっているのだと思います。

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